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ウチの倉庫がディスられる?~倉庫・物流センターの“レピュテーションリスク”を考える~
![物流ジャーナリスト・キクタの連載コラム
<あるある! 物流カン違い/シーズン2>
~人材施策編[6]~](https://www.okabe-ms.co.jp/wp-content/uploads/logisticscolumn-two-05-main1.jpg)
◆SNSにディスり、チクりが…
世間はAIと戦争の話題で持ちきりだが、SNS上には相変わらず、真偽不明の情報が満ち溢れている。AIが本当に人のための進化を遂げてくれれば、そうした偽情報・不正情報を速断し、対策もできるように思うのだが、まだ時間がかかりそうだ。
そんな中で、物流人材の育成・確保に係る人たちであればもはや、静観してはいられないネット上の不穏な動きが、ここ2年ほどの間に拡大していることにお気づきだろうか?
それはSNSや掲示板的サイトにおける、「ディスり」「チクり」の広がり、蔓延である。
何をどうディスるのが、ここでの問題なのか? それは、働く場所としての倉庫、物流センターの一部が、秘かに、あるいは公然と非難され、ディスられまくっている、という事実である。
私も実は2年余前に、ある物流センター企画運営会社の役員とのミーティングでこの話を聞くまで、そんなこと知らずにいた。彼は言う。「ウチのセンターがね、書かれちゃったんですよ。ひっどいことを……」。彼にとっては心外だったものの、一定の真実を含む事実が暴露されてしまい、反論し撤回を求めるのは困難だったものらしい。
その舞台はある求人サイトの掲示板コーナーである。誰でも読めるが、何よりイタいのは、「この倉庫の求人に応募しようかな」とサイトを見繕っているその本人に、ディスり情報が届いてしまうことだ。「この職場はひどいぜ」的な内容だったら、即座に応募をやめてしまうだろう。
倉庫・物流センターにしてみれば、人集めのため懸命にコンテンツを書いて有料掲載しているというのに、効果が真逆の返り討ちに遭い、やっかい至極な“レピュテーションリスク”に直面してしまったのである。リカバリ、名誉挽回は容易なことではない。だからこそ我々は、求人におけるレピュテーションリスクを回避する方策を、真剣に考えるべきなのだ。

◆驚きの辛辣コメントが並んでいた
「え? どんなことが書かれたのかな?」
そんな話を聞いて、わがジャーナリスト魂に火が付いた。私は帰宅後すぐPCに向かい、某有名求人サイトに入った。最近は隙間バイトばやりだから、サイトの選択肢も多い。別にID登録も何もせずに、私はただのゲストとして訪れただけである。だが、「あの会社、たぶん、ヤバいんちゃうかな……」と目を付けた、別の会社の名を試しに入力。出てきた候補から都内の拠点を適当に選び、掲示板コーナーを覗いてみた。
結果は、ビンゴ!
誰でもフツーに読めてしまうが、内容があまりにも具体的かつ辛辣で驚いてしまった。この物流拠点の厳しく忌まわしい労働環境、人間関係にさらされ、疲弊し、怒り、去っていった(中には辞めてない人もいたのだが)人々の恨み節が、そこには充満していたのだ。
いくつか例を挙げてしんぜよう。特定できないよう記述をアレンジしたが、事実表現には一切手を触れていない。

◆「あるあるカン違い」の現場がディスられる
皆さん、どうお感じだろうか? それぞれの記述から、この現場の特徴的な現実が、生き生きと再現できる気がする。
まず気づくのは、この現場でバイトや派遣さんなどの非正規従業員に指示をしている社員の態度の、目に余る横柄さである。「非正規の人間を見下して」「人として扱ってくれず」「まるでロボット」……。カースト制度下での、奴隷的使役現場さえ想起させる、告発だ。平気で「弱きをくじく」、こんな人間は決まって、「強きにへつらう」人格の持ち主である。「思いやりと慈愛」の対極に位置する、最低の卑しい人間性を、この現場は培ってしまったらしい。
現実にはこれらはそう遠い話でもなく、「人権概念の薄かった昭和の倉庫」では、「あるある物流現場」の1つだったかも知れない。今も1950~60年代の名画を見ると、男も女もそこら中で燃やすタバコを吸い続けているので、気持ちが悪くなってくるのだが……。それと同じようにこの拠点も、今はあってならない「差別的・人格軽視・強制環境」ほか過去の遺物をかかえたまま、閉鎖的職場の中で時代錯誤は温存され、令和の今も「物流あるあるカン違い」を犯している職場に思える。少しだけ個別に見てみよう。
[1]服装も乱れまくりで、決めたルールも社員たち自身が、いや上司がそもそも、守らない? 社員には「人を動かす、育てる力がない」――これは重い指摘で、「人が喜んで、やる気になって動けるモチベーション、中長期的エンゲージメント構築」には何の関心もなく、今だけ、命令だけで目下の人間を働かせればよい、と考えるお粗末な輩(やから)にこき使われていたのだ。
[2]重量物を扱うこの現場は体力勝負で、「体育会系雰囲気」に彩られ、新入社員でさえ非正規さんにタメ口でものを言う。筆者がシーズン2コラム(1)で「物流現場は、『気合と根性だっ!』? 体育会系人材”優先採用で留意したいこと」*1を書いた1つのヒントは、実はこの書き込みから得たものだ。
[3]「夏は死にそうなくらい暑く、熱中症は当たり前。冬は凍りそうに寒い」劣悪な労働環境(今では法整備もされたから、さすがに改善されたとは思うが)。その不満鬱積を抑え込む無言の圧力のように、監視カメラがこれ見よがしに設置されているのだろう。やり切れない、と思うのは私だけではあるまい。
◆歴史的旧弊を脱却し、愛される現場に
さらに一歩掘り下げると、こうした「物流・現場仕事の蔑視」「弱者は強者(お上)に平伏」メンタリティは、日本の社会に歴史的にこびりついてきた、奥深い旧弊であることに気づかされる。江戸時代以来の農民蔑視、部落民差別。昭和の旧日本軍が培ってきた暴力的・非人間的な上下統制環境(私の父が証人だ)。そして筆者がシーズン1コラム(3)「『荷役』って…なんて読むの?~その読み方に潜む〈物流軽視〉の感覚~」*2で書いた通り、古代以来の物流・運搬の仕事への蔑視……。
こんな物流現場を、許しておいてよいはずがない!
こんな物流現場管理者、リーダーを、放置してよいわけがない!
だから筆者がシーズン1で熱筆をふるった最大のテーマの1つが、「物流リーダーの最重要資質は、能力?…いや、人格力!」*3(シーズン1コラム(9)ほか)であった。現場でけなげに働く人を見下し、軽んずる愚かさから脱却し、反省し、「働く人を心から大切にして、(上から目線でなく、横から目線で)ともに動く」人間性を培うことこそが、現代の物流リーダーには必要なのだ。現場で思ったことを率直に発言できる「心理的安全性」を高め、「この現場で働き続けたい!」「このリーダーならついていきたい!」と部下から慕われ、信頼されるリーダーになり、社員・従業員にしっかり定着してもらわねばならない(そうしたリーダー人材育成の考え方については、シーズン2コラム(4)「“叱るな/ほめるな/教えるな”…ってそれ、ほんと?~驚きのアドラー人材教育論を検証する~」*4で詳述したので参照してほしい)。
生産年齢人口の急速な縮減が続くこの10年余は、日本産業界の「超・人手不足時代」がえんえんと続く。いくら隙間アルバイターを簡単に見つけられると言ったって、作業に習熟し、リーダーとその現場を愛してくれる人たちの生産性が、嫌々しぶしぶ働かされる人たちより高いことは、火を見るよりも明らかだろう。
今や、「物流の持続可能性」を担保する最大の要件の1つが、「働く人の確保と定着」なのである。給与面での配慮も当然必要だが、心理的な労働環境の整備はそれに負けないくらい、「働く人が辞めない理由」になる。それを最も大きく左右する要因が、現場リーダー、管理者、社長の人間性なのである。
現場ルール設定と順守の徹底など、すぐできることもある。ただし根底まで本気で考えるなら、小手先の対応ではなく、会社の存在意義、経営の目的観・使命感を再定義し、その志が現場に浸透させられるか否かまで、厳しく問い直す必要がありそうだ。まとめて今回の結論は……
(1) ディスられない物流現場になるカギは、リーダーの人間性練磨である
(2)リーダー、物流管理者、社長の人格陶冶が、この課題克服への真因となる
私は心から、皆さんの健闘・奮闘を期待している。
(注記)
*1 https://www.okabe-ms.co.jp/s2-logisticscolumn01
*2 https://www.okabe-ms.co.jp/support/knowledge/logistics-column03
*3 https://www.okabe-ms.co.jp/support/knowledge/logistics-column09
*4 https://www.okabe-ms.co.jp/s2-logisticscolumn04
(つづく)
著者紹介

菊田 一郎 (きくた いちろう)
エルテックラボ 代表/物流ジャーナリスト。1982年、名古屋大学経済学部卒業。物流専門出版社に37年勤務し月刊誌編集長、代表取締役社長、関連団体理事等を兼務歴任。2020年6月に独立し現職。物流、サプライチェーン・ロジスティクス分野のデジタル化・自動化、SDGs/ESG対応等のテーマにフォーカスした著述、取材、講演、アドバイザリー業務等を展開中。2017年6月より大田花き社外取締役、2020年6月より日本海事新聞社顧問(20年6月~23年5月)、同年後期より流通経済大学非常勤講師。21年1月よりハコベル顧問。
著書に『先進事例に学ぶ ロジスティクスが会社を変える』(白桃書房、共著)、『ビジネス・キャリア検定試験標準テキスト「ロジスティクス・オペレーション3級」』(中央職業能力開発協会、11年・17年改訂版、共著)など。







