第2回「物流2024年問題」の真因を探る!~ホントは何が問題なのか?~

物流ジャーナリスト・キクタの連載コラム
<あるある! 物流カン違い>物流分野に漂う12の勘違いを正す!

ドライバーの時間外労働に上限規制2024年4月から開始

「物流2024年問題」だ、たいへんだ~、と大騒ぎする私やあなた。

でもそんなあなたを尻目に、物流に無関心な家族やご近所さんから「でもさ、そもそもなんで、そんな問題が起こるの?」と聞かれたら、あなたは何と答えるだろうか? 

以下「なぜなぜ5回」でその真因を突き止める。

みんなの物流2024問題のギモン
トラックドライバーのアンサー

A1. 『法律でドライバーの働ける時間が減らされるんで、運べる量が減っちゃうんだよ…』

運べる量が減るのは確かだが、ここで「減らされる」とかの被害者意識を表出してはいけない。働き方改革関連法は、長時間労働で働く人を苦しめることがないよう制定され、その意義自体は圧倒的に正しい。「(法の定める)過労死ライン以上に働かないと食えない」仕事なら、まずその低賃金が是正されるべきであるはずだ(Q2参照)。

トラックドライバーのアンサー

A1.(つづき) 「時間だけじゃなくて、ドライバーのなり手が減っちゃって、人数も足りないんだよ…」

統計によれば近年、ドライバーの就労者数は毎年2%程度減っている。生産年齢人口の減少で働き手の人数全体も急速に縮減している。政府の予測数値は、このままでは「2030年にドライバーが21万4,086人不足する」「輸送能力の34.1%(9.4億トン分)が不足する」であり……これでは日本の物流の1/3が止まってしまう。何が何でも回避せねばならない。

みんなの物流2024問題のギモン
トラックドライバーのアンサー

A2. 『荷主や元請からもらえる運賃が安くて、給料を上げてもらえないんだよ~泣…』

みんなの物流2024問題のギモン
トラックドライバーのアンサー

A3. 『運送業界じゃ競争で運賃を叩き合っていて、値上げどころじゃなかったんだよお』

1990年代の物流二法改変で参入障壁が下がり、約4万社だったトラック事業者数は2007年までに6万3000社超に激増、市場はレッドオーシャン化した。「失われた30年」を通じ、過剰な競争で荷主からの値下げ要求→業界内での運賃叩き合いが常態化し、運送会社とドライバー仕事の持続可能性が損なわれる事態を迎えた。原因は先の政策判断にあり、政府もようやく今、物流政策を180度転換した。間に合うのか?の瀬戸際である。

みんなの物流2024問題のギモン
トラックドライバーのアンサー

A4. 『イヤならよそに頼むから、とか言われたら値下げも断れないよ~。万事そんな調子で、物流って仕事が、ムチャ軽く見られてきた気がする……』

バブル期の物流危機回避を目的に発動された競争至上主義的政策で野放図に事業社数が増え、運賃市況が低下。この政策目的が達成されたのは、バブル崩壊で物量が減退する時期という最悪のタイミングで、供給過剰の買い手市場で荷主は容赦ない買い叩きを続けられた。でもなぜ? さらに深掘ると、それを許した社会的な土壌に突き当たる。底流では古き世からの職業差別・人権軽視、物流軽侮の風潮が産業界に染み渡っていたのではないか、と筆者はみる(Q5参照)。

みんなの物流2024問題のギモン
トラックドライバーのアンサー

A5. 『どうも日本では昔から、運送、運ぶという仕事が軽んじられてきたらしいんだ…』

「日本の物流の父」と謳われる平原直(日本パレット協会創設者・初代会長)の著書「物流史談」によると、昭和30年の週刊朝日に掲載された職業世評調査で、「運搬人」は最下位の32位だった。1位・大学教授、2位・医師…に対し、29位・炭焼夫、30位・採炭夫、31位・道路工夫…の後塵を拝する最低評価である。

記事は「職業に貴賤あり」と皮肉っていたらしい。同書ではそれ以前にも、昭和の日本軍の兵営で「輜重輸卒が兵隊ならば 電信柱に花が咲く」とのざれ歌が流行っていたことが記されている。輜重隊とは軍事行動の後方において超重要なロジスティクスを担う兵站輸送部隊であるのに、それが「兵隊などとはおこがましい」と馬鹿にされていたのだ。勘違いにも程がある。
これらの認識が戦後の産業界にも無意識にせよ脈々と受け継がれ、今日までの「物流軽視」の風潮を作り上げた。そして物流を戦略的・合理的にコントロールするロジスティクスを企業戦略として重視する欧米企業に、圧倒的な生産性の差をつけられてしまったのではないか……というのが私の歴史的見立てである。

参照 https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/80548

まとめ

現実には形あるすべての商品の移動と流通を支える物流の働きなくして、生活も産業も成り立たない。その物流事業者を再生産不能な低料金で酷使して恥じない一部荷主、非正規労働者を使い捨てにして自社利益を優先する雇用者の「働く人の労働環境改善」に関する無関心、「人権感覚の欠如」こそが、「物流2024年問題」の根底にある「真因」ではないか。
だから繰り返す。物流を人間らしく尊厳のある、誇りの持てる仕事へと高めること。それが関係者に突き付けられた、真の「物流2024年問題」なのだと私は思う。

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