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東大・西成教授も国も明言「物流統括管理者はCLOじゃない」~この重篤カン違いを糺す・4度目の決定稿~

(2026.06.15)
◆国も両者の違いを認めた
今回は緊急特番。東大・西成教授の協力を得て、本コラムがしつこく追って来た表題テーマの決定稿をお送りする。改正物流効率化法(以下「物効法」)の全面施行で4月から特定荷主には物流統括管理者の選任が義務付けられ、すでに国への提出期限を迎えている。なので、本編では私論を同教授と政府の見解で裏付け、事実として確定するため急ぎお届けすることにした。
連載シーズン1で筆者は3度重ねて、「物効法が特定荷主に設置を義務付けた物流統括管理者は、原案のままではCLO(最高ロジスティクス責任者)とは言えない」と力説してきた*。
* (1)24年7月 → https://www.okabe-ms.co.jp/support/knowledge/logistics-column04
(2)24年12月 → https://www.okabe-ms.co.jp/support/knowledge/logistics-column09
(3)25年9月 → https://www.okabe-ms.co.jp/logistics-column18
2年の間叫び続けた理由は、当初の政府案がオペレーション=実行レイヤーにある「物流」と、戦術・戦略レイヤーの「ロジスティクス」「サプライチェーンマネジメント」を混同するかの案を提示していたからだ。それでは産業界が混乱をきたし、サプライチェーン・ロジスティクスの重大価値を貶める恐れがあると危惧したのだ。筆者らのパブコメ意見が反映され、その後の改良で役割表記はかなりロジスティクス等上位レイヤーに拡大したものの、CLOの要件を満たすことはなかった。
せっかくトラック適正化法などと合わせた怒濤の物流関連法改正により、力ずくで物流供給力を守る規制強化策が整ったのに、荷主側の管理者機能が混乱したのではグリップが効かない。互いの用語理解に齟齬が生じて、物効法が掲げる「社内・社外の円滑な物流連携」を妨げる可能性さえある。
このタイミングで4度目に本テーマを取り上げるのは、そんな私の長い戦いに、ようやく1つの決着がついたからである。本年2月、国交省が事務局となり編成した「物流統括管理者(CLO)のあるべき姿に関するワークショップ」提言として、「物流統括管理者(CLO)に期待される姿」が発表された。本提言で国は初めて「物流統括管理者とCLOの役割には共通点もあるが、異なる」と、はっきり認めたのである。当方の訴えが届いた結果かどうか知らないが、私たちが指摘した国家規格JISとの整合性についても提言ではきっちり引用して比較し、違いを説明。「サプライチェーン全体最適」「社会課題の解決」などCLOの重要任務が物流統括管理者の役割に含まれていないことも私の指摘通り認め、「法律上の責務ではないが、CLOの役割も果たすことを期待する」と書き分けてある。
以上を端的に示してくれたのが、同じ2月に国土交通省 物流・自動車局 物流政策課長の髙田龍氏が講演で発表した図である(図表1)。以前のコラムでも触れた「物流統括管理者は、法令上の責務を果たしつつ、それにとどまらず、CLOやCSCOの役割をも担っていくことが期待される」という持って回った言い回しはそのままだ。しかし本図には、「CLO/CSCOの役割は、物効法の物流統括管理者の規定範囲を越えたもの。CLO/CSCOの設置が義務化されたわけではない」ことが明示されている。
図表1 国交省髙田課長の講演資料が明示した物流統括管理者とCLOの違い(筆者加筆)

上図の左側が[A]法令上の物流統括管理者の責務、右側が[B]CLOやCSCOの役割で、両者の違いが下の説明で一目瞭然になっている。ただし「法令上の」と「期待される」の言い回しは微妙だ。その意味は、「法令上の責務はないんだけど、(できれば/なるべく)CLOの役割も果たしてね。期待してるよ~!」てなことになるかと思うが、法令の解釈は上記で間違いない。
◆だが両者の違いは、ほとんど理解されていない
本テーマを重ねて取り上げたもう1つの理由は、上記の提言や講演を通して「物流統括管理者とCLOは違う」との政府見解が明らかにされたにもかかわらず、「物流統括管理者はCLOだ」というカン違い理解が、産業界では(残念ながら多くの物流専門メディアも含めて)微動だにしていないように思われることである。「いよいよCLO設置が義務付けられました~!」とかの悲しいカン違い表記が、昨日も今日も世に氾濫している。
その元凶の1つは、上の提言も含め関連政府文書にはすべて「物流統括管理者(CLO)」と書かれていることだ。常識的に「AA(BB)」とは、「AA=BB」または「AA≒BB」を意味するのだから、カン違いするのも無理はない。ゆえに筆者は当初から、「物流統括管理者(CLO)」の表記は、「物流統括管理者=CLO」と誤解されるから、不適切だと主張してきたのだが、遂に容れられなかった。筆者と、同意の識者の主張は上の政府見解通り、「物流統括管理者≠CLO」「物流統括管理者<CLO」である。
筆者の主張が理にかなっていることを示すエビデンスとして、筆者がこの数年磨き上げ、本シリーズにも途中経過を発表してきたオリジナル図を引用する。これは最新改定版で、レイヤー別の領域・役割がよりはっきり弁別できるものに仕上がったと思う。ようく吟味してほしい
図表2 ビジネス遂行4階層でみる物流/ロジ/サプライチェーンと物流統括管理者・CLOの役割
(筆者作成)

(c)L-Tech Lab, Kikuta, 2026
◆西成教授も明言、「CLO設置は各社の判断、義務ではない」
以上の私見に賛同してくれる識者も何人かあり、かねてから応援し合って来た。その代表選手として今回は、東京大学大学院の西成活裕教授に登場いただくことにした。教授は上に挙げた「物流統括管理者(CLO)のあるべき姿に関するワークショップ」の委員も務め、本テーマに今最も詳しい学識経験者の1人である。

西成教授は以前から、「CLOに必要な資質は(1)最新技術、(2)財務、(3)ビジネスモデル、(4)倫理観だ」と、物流部門責任者を大きく越える役務範囲を示してきた。1人でこれらの資質をすべて兼ね備える人がそういるとは思えず、ゆえに各資質を持つ人を集めて「CLOチーム」を編成すべき、というのが教授の持論。筆者もこれに賛同して紹介に努めてきたが、とりわけ「倫理観」が挙げられた点を評価している。
それは「CLO講座」等で簡単に学べる「知識」ではない。「生きる構え/人格/人間性」の問題であり、先人や師匠の触発・啓蒙が契機になる。「この物流・サプライチェーン改革は、私が成し遂げねば!」と倫理観・使命感をもって決意した人なら、社長が指示しなくても自ら学び、社内外で仲間を集め、推進の核となっていくだろう。だから筆者は前回コラム[3]で、「使命感は(内発的)モチベーションの源泉」だと強調した。そんな人間性を磨くため、リーダーは師を求め「人間性革命(Humanity Transformation/HX)」に挑むべきだ、というのが筆者の持論である。
さて西成教授はその上で、直近の月刊ロジスティクス・ビジネス5月号*(ライノス・パブリケーションズ)のインタビュー記事「渋滞学の創始者に聞く物流の進むべき道 CLOは教養を身に付けるべし」において、本稿テーマについて明快に語ってくれている。
*https://magazine.logi-biz.com/backnumber/2026_05/
同氏の許可を得たので、その核心部分を要約整理し引用する。→は筆者コメントである。
(1)CLOの設置は義務でなく各社の判断
『物流統括管理者はトラック運送サービスの持続可能な提供の確保を目的として、改正物効法で一定規模以上の荷主に選任が義務付けられ、その業務も責任も法律で規定されている。一方CLOは、企業活動全体やSCMをロジスティクスの観点で変革し、社会課題の解決を通じて企業価値を向上させる役どころ。設置するかどうかは各企業の判断に委ねられている』
→第一の核心ポイント。義務を越えてCLOとするか否かは各社が決めればよい。
(2)CLOチームを束ねるゼネラリスト
『CLOには経営者視点での物流戦略だけでなく、組織マネジメント・人材確保、グローバルSCMをはじめ、物流以外の広範な領域に関する知識・知見が必要。これらを個人で備えることは困難で、各分野に通じた人材で専門部署/有志チームを形成するアプローチも想定される。そうした人材を束ねて機能させるゼネラリストとしての能力もCLOの要件だ』
→全分野を知悉している必要はないが、目利きや価値判断のできる人材であるべき。
(2)CLOチームを束ねるゼネラリスト
『CLOには経営者視点での物流戦略だけでなく、組織マネジメント・人材確保、グローバルSCMをはじめ、物流以外の広範な領域に関する知識・知見が必要。これらを個人で備えることは困難で、各分野に通じた人材で専門部署/有志チームを形成するアプローチも想定される。そうした人材を束ねて機能させるゼネラリストとしての能力もCLOの要件だ』
→全分野を知悉している必要はないが、目利きや価値判断のできる人材であるべき。
(3)リベラルアーツで育む人間力
『現代は戦争、災害、AIのような技術進歩が社会に不連続な変化を起こし、中長期的経営戦略の策定が今まで以上に難しい。CLOには未来への視座を持ち、その過程で直面する急激な変化にも臨機応変に対応する資質、端的に言えば「人間力」が求められる。タイパやコスパばかり追い求めるのではなく、修羅場、失敗、道草、孤独の経験で培われる変革者としての可能性。CLOには物流の知識が必要と思われがちだが、むしろ身に付けるべきはリベラルアーツ(人文科学から自然科学まで広範な分野を横断的に学ぶ教養)だ』
→「人間力」には「倫理観」「包摂力」「指導力」「胆力・突破力」etc.を含めたい。それを培う基盤となるのが、物流の枠を越え、社会・歴史・文化・芸術・科学へと広がる総合的な「教養力」。筆者はリベラルアーツ教育の専門家を教授と共通の知人に持ち、意気投合して議論してきた。
◆「良い・悪い」ではなく「違う」だけ
誤解を避けるため明言しておく。私は「物流統括管理者の規定は不十分だ」とか、「物流統括管理者は不要で、CLOを設置すべき」などと言っているのでは、まあっったく、ない。「良い・悪い」と問題にしているのでもない。「違う」から「区別すべき」と主張しているだけである。
物効法はドライバー・物流サービス供給力の不足による物流危機を回避することが施行の目的である。法が示す3大義務、「積載効率向上」「荷待ち時間削減」「荷役等時間削減」を実効的に進めることが最大の使命だ。そのために、現場オペレーションに寄った物流統括管理者の規定と役割が書かれたことは、当然である。
同時に、わが国荷主企業が本格的なサプライチェーン・ロジスティクス(SCL)の最適化担当役員として、CLO/CSCOを設置することも大賛成である。政府がそれを支援することについては、「余計なお世話」「国が企業の自由な活動を制限するのか」などの異論はあるとしても、方向性には賛同する。
モノづくりに秀で、現場の強さが国際競争力の源になってきた経緯から日本企業には従来、横ぐしのSCL視点での経営管理・ガバナンス、統括執行機能が不足していた。グローバル化の進展する中それが弱みになっていたことは否めない。だから国際競争力の回復のためにも、社会課題に真っ向対峙するためにも、CLO設置という企業組織改革は有効な手段になるはずだ。
ただし。上に明記した通り、物流統括管理者とCLOは、役割も管掌範囲も異なる存在である。それを混同するなら、特定荷主の義務としてどちらの名で任命するとしても、権限や組織体制があいまい化し、統率力・推進力は低下する。その結果、物効法が目指す社内連携+社外連携+社会連携の強化に齟齬が生じるような事態は、断じて避けねばならない。
A.当社は何よりまず、3大義務の達成を目指し、物流統括管理者を設置する
B.当社はこの機会に抜本的な組織変革を進め、物流統括管理者を兼ねたCLOを設置する
ABいずれを採るかは各社の判断に任されている。関係者の皆様にはよくよく思念を重ねてもらえればと、筆者は切望している。
(つづく)
著者紹介

菊田 一郎 (きくた いちろう)
エルテックラボ 代表/物流ジャーナリスト。1982年、名古屋大学経済学部卒業。物流専門出版社に37年勤務し月刊誌編集長、代表取締役社長、関連団体理事等を兼務歴任。2020年6月に独立し現職。物流、サプライチェーン・ロジスティクス分野のデジタル化・自動化、SDGs/ESG対応等のテーマにフォーカスした著述、取材、講演、アドバイザリー業務等を展開中。2017年6月より大田花き社外取締役、2020年6月より日本海事新聞社顧問(20年6月~23年5月)、同年後期より流通経済大学非常勤講師。21年1月よりハコベル顧問。
著書に『先進事例に学ぶ ロジスティクスが会社を変える』(白桃書房、共著)、『ビジネス・キャリア検定試験標準テキスト「ロジスティクス・オペレーション3級」』(中央職業能力開発協会、11年・17年改訂版、共著)など。


